2020-01-01から1年間の記事一覧

覚え書き 15

15.お茶会に招かれましたところどころに立っている近衛騎士に目で挨拶しながら、長い廊下を進んでいく。やがて色とりどりの花が咲き乱れた中庭に辿り着いた。「今日は外でお茶をいただこうと思ってね。気に入ってくれれば嬉しいよ」「とても素敵なお庭です…

覚え書き 14

14.花嫁修行「いやー、助けてフリッツ様ぁ」とある昼下がり、奇声を上げながら廊下を走ってくるマールバッハ男爵令嬢を見た。「マールバッハ男爵令嬢、なんですかはしたない」ロッテンマイヤーさんみたいな人がマールバッハ男爵令嬢の背中に声を投げつける…

覚え書き 13

13.第二王子ってどんな人?あれから数日。なぜか俺はコースフェルト侯爵から呼び出されていた。いったいなんの話しなのか戦々恐々としながら、出された紅茶に形だけ口をつけていると、客室の扉が開く音がした。「待たせて済まないね。ヴェルナー君」随分フ…

覚え書き 12

12.とうやら2ndシーズンに突入したらしい「これからどうぞよろしくお願いします」右手を左胸に当てて頭を下げると、エルヴィン殿下は微笑んでうなずいた。「色々大変だろうけど、よろしくね」エルヴィン様の隣には、少し困ったような笑みを浮かべたコースフ…

覚え書き 11

11.悪役令嬢の処遇が決まりました翌日、校長室に呼び出しがあった。王太子とマールバッハ男爵令嬢、コースフェルト侯爵令嬢も呼び出されたらしい。なんでこの面々と一緒に俺が呼ばれるの?ため息を一つつくと、俺は校長室のドアをノックした。「入りなさい…

覚え書き 10

10.お説教朝から見たくないものを見てしまった。悪役令嬢の断罪イベントから一週間。なぜか断罪イベント前と同じ日々が続いている。王太子はマールバッハ男爵令嬢といちゃいちゃしてるし、コースフェルト侯爵令嬢はまだ学校に通っている。王太子の目を盗ん…

覚え書き 9

9.逆ハーレムエンド狙いらしい授業はいつも通り滞りなく進み、休み時間のたびにコースフェルト侯爵令嬢は大勢の生徒に囲まれていた。他のクラスからも見に来ているね。その様子を王太子が不快げに睨みつける。自分が撒いた種でしょ?昼休みに俺はため息を…

覚え書き 8

8.悪役の美学「わたくし、引き際は美しくありたいと思いましたの」「なぜ黙って家を出たのか」というコースフェルト侯爵の質問への、令嬢の答えである。「引き際とは?一体お前はなにを言っているのだ?」「悪役の美学ですわ、お父さま。立つ鳥跡を濁さず…

覚え書き 7

7.お父様が乗り込んできました今日も王太子とマールバッハ男爵令嬢は、人目もはばからずいちゃついてる。今からそんなにいちゃいちゃしてたら、結婚する頃には飽きるぞ。どうせまるで庶民のようなマールバッハ男爵令嬢が珍しくて、付き合ってる部分もある…

覚え書き 6

6.「待て」ができる賢い子です校長先生との話が終わったというコースフェルト侯爵令嬢に付き添って教室に戻る途中、思い切って俺はコースフェルト侯爵令嬢に尋ねてみた。「コースフェルト姫君は、校長先生に退学届を出したのですか」「ええ。でもまだ受理…

覚え書き 5

5.ワイ、ワイバーン。今窓の外にいるのワイバーンは驚くほどのスピードで、学校に迫ってきていた。俺が現実逃避している間に、避難する機会を失ってしまったようだ。みんな、すまない。俺が不甲斐ないばっかりに…阿鼻叫喚と化す教室の中で、俺は床に膝と両…

覚え書き 4

4.見てはいけないものを見てしまった翌日、コースフェルト侯爵令嬢は学校を休んでいた。王太子とマールバッハ男爵令嬢はいつもどおりバカップルだし、王太子の子分もといマールバッハ男爵令嬢の下僕は相変わらず金魚のフンだ。この中に混じるのは嫌すぎる…

覚え書き 3

3.国王陛下にご報告「…以上が本日起こった事柄です」報告を終えると俺はため息を吐いた。「予の前でため息とは、ずいぶん砕けているものよな」わかっているだろうに陛下はニヤリとするでもなくそう仰った。「申し訳ございません」「うん?そなたもアレにつ…

覚え書き 2

2.俺と男爵令嬢の共通点?ヴィルマ・フォン・マールバッハ男爵令嬢は、俺たちが王立学園の二年生になった春から編入してきた。どうやらマールバッハ男爵家に雇われていたメイドがお手付きになり、産まれた娘がヴィルマ・フォン・マールバッハ男爵令嬢で、…

覚え書き 1

1.唐突ですが悪役令嬢の断罪シーンから「カテリーナ・フォン・コースフェルト侯爵令嬢。そなたとの婚約を破棄する」…やったーー。とうとうやってしまったよ、あの王太子。頭を抱える俺の前で可憐な令嬢を傍らに、バカ…いやいや、やっぱり頭の中だけでも、…